「うちにも姉妹都市があるらしいが、最後に交流したのは前々任者の時代」——人事異動の多い自治体では、珍しい話ではありません。日本の姉妹都市・友好都市提携は1,800を超え(出典: 自治体国際化協会CLAIR)、概算で毎年約37の提携が5の倍数の周年を迎えます。周年は休眠提携を再起動する絶好の口実ですが、その前に立ちはだかるのが「そもそも誰に、何語で、何を書けばいいのか」という素朴で切実な問題です。
本稿では、この「最初の一通」に絞って実務を整理します。
1. 送る前に — 庁内に残る記録を掘り起こす
いきなり書き始める前に、まず自分の庁内を調べます。確認したいのは次の三点です。
- 提携書(盟約書)の原本または写し: 提携年月日と当時の首長名は、書簡の中で必ず触れることになります。
- 最後の交流記録: 最後に何を一緒にやったのか。訪問団か、記念品交換か。これが分かると「あの交流以来ご無沙汰しております」と自然に書き出せます。
- 過去の窓口担当者・通訳・国際交流協会関係者: 退職者や民間の関係者が個人的なつながりを保っていることは意外に多く、最短の再接続ルートになり得ます。
2. 宛先と言語 — 「首長から首長へ」が基本形
宛先は相手都市の首長(市長・町長に相当する役職)とし、差出人も自分の自治体の首長名にするのが基本形です。担当者名義のメールから始めると、相手側で「誰が処理すべき案件か」が曖昧になり、埋もれやすくなります。首長名の公式書簡であれば、相手の組織内で然るべき部署に回付される可能性が高まります。実務連絡用に、書簡の末尾か添え状で担当部署のメールアドレスを明記しておきましょう。
言語は英語を基本とし、可能であれば相手国の言語を併記するのが丁寧です。相手国語の訳文を添えると、「わざわざ準備した」という誠意そのものがメッセージになります。訳文の正確さに不安がある場合は、英語のみでも失礼にはあたらないのが一般的です。
送付手段は、公式書簡のPDFをメールで送り、必要に応じて郵送原本を後追いさせる形が現実的です。相手都市の公式サイトにある代表窓口・国際担当のアドレスを起点にします。
3. 何を書くか — 過去への敬意、現在の紹介、小さな提案
最初の一通に盛り込む要素は、次の三段構成が書きやすくおすすめです。
- 過去への敬意: 提携年と経緯に触れ、交流が続かなかったことを責めるのではなく、「両市の先人が築いた関係を大切にしたい」という姿勢を示します。
- 現在の自都市の紹介: 人口や産業、最近のトピックを簡潔に。相手も担当者が変わっているはずなので、「今のうちの街」を知ってもらう情報は歓迎されます。
- 小さく具体的な提案: いきなり訪問団の派遣を持ちかけるのではなく、「オンラインでの担当者顔合わせ」「周年に向けた記念書簡の交換」「子どもたちの作品交換」など、相手が負担なく応じられる提案を一つだけ添えます。
避けたいのは、要求の羅列と過剰な自己宣伝です。最初の一通の目的は合意ではなく、返信をもらうことだけに絞ります。
4. 返信が来ないとき — 三つの代替ルート
一〜二か月待って返信がなければ、別の経路を試します。相手の怠慢と決めつけないことが大切です。組織改編でメールアドレスが変わっていた、担当部署がなくなっていた、ということは頻繁に起こります。
- 大使館・総領事館ルート: 在日の相手国大使館、または相手国にある日本大使館・総領事館に事情を説明し、照会を依頼する方法です。公的機関からの照会は相手都市でも動いてもらいやすいものです。
- 州・県など上位自治体ルート: 相手都市が属する州や県の国際担当部局に、都市の窓口を尋ねる方法です。上位自治体同士の提携や交流があれば、そちらの窓口も使えます。
- 商工会議所・民間ルート: 相手都市の商工会議所や、過去の交流に関わった学校・団体に連絡する方法です。行政の窓口が見つからなくても、民間側に当時を知る人が残っていることがあります。
休眠提携の再起動に必要なのは、大きな予算ではなく、過去への敬意と小さな提案を載せた丁寧な一通です。
テクスト株式会社は全国21自治体で人材育成・プロジェクトマネジメント・国際交流を支援しており、書簡の起草や再接続ルートの調査もお手伝いしています。姉妹都市・友好都市×地方創生のページもぜひご覧ください。個別のご相談はお問い合わせから承ります。
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