社内ナレッジには、規程、業務手順、過去の判断、よくある質問などがあります。この記事では、原本を管理しながらFAQとして共有する進め方を扱います。検索システムを導入する前にも使える整理方法です。
同じ質問への回答を何度も書いているなら、社内FAQはAI活用の候補になります。ただし、過去の回答を集めただけでは、変更前のルールや担当者独自の判断も残ります。AIで下書きを整理した後に、業務の責任者が正しい答えを確定する流れが必要です。
この記事では、質問を集めるところからFAQカードを作り、更新・廃止するまでを扱います。検索ツールを選ぶ前段階として、スプレッドシートや既存の文書でも始められる形です。
よく聞かれる質問を、実際の言葉で集める
最初は1つの業務に絞り、担当者に繰り返し届く質問を集めます。「見積の承認手順」といった資料名に直す前に、「急ぎの見積でも承認が必要ですか」のような聞き方を残します。利用者がどこで迷うのかを確かめる材料になります。
AIには似た質問の分類を任せられますが、言い方が似ていても条件が違う場合があります。通常対応と例外対応、社内向けと顧客向けは、同じ回答にまとめてよいか人が判断します。
FAQカードは、回答と根拠を一組にする
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| ID・質問 | FAQ-001/見積書を送る前に何を確認しますか |
| 回答 | 宛先、金額、条件、社内承認、添付書類を確認します |
| 対象・例外 | 標準の見積書。特別条件がある場合は営業責任者へ確認 |
| 根拠 | 見積送付手順v2「送付前の確認」 |
| 管理者 | 営業責任者 |
| 状態 | 下書き/確認済み/見直し中/廃止 |
| 確認日・次の見直し | 担当者が実際に確認した日と見直す条件 |
確認済みの状態は、AIが判断して付けるものではありません。担当者が元資料と照合してから変更します。まだ確認していないカードを、全社へ配布する回答集に混ぜないようにします。
AIに任せるのは、質問の整理と回答候補
入力した質問を、同じ回答で対応できそうなものごとに分類してください。
対象条件や例外が違う質問は、別の候補として残してください。
回答案は、添付した正本の資料に書かれた範囲だけで作成します。
各案に資料名と該当箇所を付けてください。
資料に答えがない質問は、回答を作らず「担当者への確認事項」にします。
すべての候補の状態は「下書き」としてください。
例えば「返品できるか」という質問でも、対象商品や販売時の条件で答えが違うことがあります。条件を省略して短くまとめると使いづらくなるため、短さよりも適用範囲を優先します。
ルールが変わったら、関連するFAQも見直す
更新日を一律に書き換えるだけでは、内容を確認したことになりません。正本の資料が変わったときに、それを参照するFAQを抽出できるようにしておきます。資料名だけでなく見出しまで残すと、影響範囲を探しやすくなります。
- 業務の管理者が正本を更新し、変更点を記録する。
- 関連するFAQを「見直し中」にする。
- 回答・対象条件・根拠を修正し、人が確認する。
- 検索対象と共有先を新しい版に切り替える。
- 旧版は履歴として区分し、通常の回答候補から外す。
見直し中のカードは、古い回答をそのまま表示するか、確認先だけを案内するかを業務に応じて決めます。誤った案内の影響が大きい事項は、回答を止めて担当者へ確認する方法が考えられます。
FAQが役立つかを確かめる
件数の多さだけで評価せず、質問に対して適切なカードが見つかったか、追加の問い合わせが必要だったかを記録します。「見つからない」「条件が足りない」「古い」のどれなのかが分かると、次の修正を決められます。
最初の対象は、担当者が答えの正しさを確認できる範囲にします。検索機能を整える手順は社内資料検索を始める準備、管理者が変わるときの引継ぎはAIを業務に定着させる運用手順にまとめています。
社内ナレッジを、原資料・回答・更新記録に分ける
社内ナレッジの保管場所を作っただけでは、どの答えを使うべきかは決まりません。就業規則や操作手順などの原資料を正本とし、FAQはその資料から答えやすくした入口、更新記録は変更の経緯として分けます。
架空例として、出張精算の手順が変更された場合、旧FAQを一つ修正するだけでなく、参照する手順書、承認条件、関連する質問も確認します。管理表には「変更された資料/影響する質問/確認者/反映日」を残します。AIが作った回答を、確認なしに新しい規程へ昇格させないようにしてください。
回答と原文を一緒に残すFAQカード
次は架空の見積送付手順をもとにした例です。自社の承認ルールへ置き換えて使ってください。
FAQ ID:Q-001
質問:急ぎの見積なら、確認を省いて送ってよいですか?
回答案:この手順では、急ぎでも承認済みの版を使います。
承認者が不在の場合は、手順に記載された代行者へ確認します。
適用範囲:標準の見積送付。特別条件は別途確認
原資料:見積送付手順v2「承認」
根拠の原文:『送付には承認済み版を使用する。不在時は指定の代行者が確認する』
原資料の管理者:営業責任者
公開対象:この業務を担当する社内メンバー
状態:下書き
確認者・確認日:未確認
次に見直す条件:承認者、代行者、送付手順の変更
AIがこの原文から「急ぎなら事後承認でよい」と回答した場合は、根拠にない例外です。読みやすさだけで採用せず、回答を原文の範囲へ戻します。
原資料が更新されたら、FAQは全部作り直しますか?
まず変更された資料名・章を参照するカードを抽出します。例えば代行者の変更なら、回答本文に名前があるカードと、確認先として同じ担当を指定したカードを見直します。影響のないカードまで更新日だけを変更する必要はありません。
答えが書かれていない質問にはどう答えますか?
担当部署への確認先と必要な情報を示します。FAQを増やすために回答を補わず、同じ質問と条件違いの分類で、既存の答えを使えるか確かめます。新人向けの入口は入社時のFAQとして整理できます。
自社の運用に合わせて整理したい場合は、現在の作業と確認したい点を挙げてAI活用の進め方を相談できます。