「国際交流の予算は真っ先に削られる」。多くの担当者が口にする悩みですが、財政課の側に立てば理由は明快です。効果の説明が「友好を深める」「相互理解を促進する」といった言葉にとどまり、他の事業と同じ土俵で比較できないからです。財政課は国際交流に冷たいのではなく、比較可能な材料がない要求に予算を付けられないだけなのです。
裏を返せば、材料の出し方を変えれば対話は成立します。本稿では、国際交流事業の予算要求を支える3つの根拠——総合計画との接続、定量効果、他自治体の前例——の組み立て方を順に解説します。
1. 根拠①:総合計画との接続 — 「どの政策の手段か」を一文で言う
最初にすべきは、自分のまちの総合計画(自治体の最上位計画)や総合戦略を開き、国際交流事業がどの施策の手段になり得るかを特定することです。「国際交流の推進」という直接の記載がなくても構いません。「多文化共生」「グローバル人材の育成」「関係人口の創出」「地域産業の販路開拓」——これらの施策体系のどこかに、必ず接続点があります。
要求書の冒頭には「本事業は総合計画◯◯(施策名)を実現する手段である」と一文で書きます。この一文があるだけで、事業は「担当課の思い入れ」から「計画上の位置づけを持つ施策」に変わり、査定の議論が「やるかやらないか」から「どの規模でやるか」に移ります。
2. 根拠②:定量効果 — 関係人口・教育・産業の3面で数える
「友好」を直接数えることはできませんが、事業の産出物は数えられます。次の3つの面で、測れる指標をあらかじめ事業設計に埋め込んでおきます。
- 関係人口(移住せずとも地域と継続的に関わる人々):事業を通じて相手都市側に生まれる「自分のまちを知る人」の数。訪問団の人数、受入時に関わった市民・ホストファミリーの数、交流後も連絡が続く関係の数などが指標になります
- 教育:参加した児童生徒数、交流校数、参加者アンケートでの意識変化。教育効果は保護者と議会の双方に伝わりやすい指標です
- 産業:交流に参加した地元企業数、商談・視察の件数。すぐに成約が出なくても「接点の数」は初年度から数えられます
大切なのは、要求段階で「この事業では◯◯を測ります」と宣言してしまうことです。効果測定の設計込みの要求は、財政課からの信頼度がまったく違います。数値は概算でよいので、算出の考え方(人数×回数など)を必ず添えます。
3. 根拠③:他自治体の前例 — 「よそでは成立している」を示す
財政課が最後に気にするのは「この投資は無謀ではないか」という点です。ここで効くのが前例です。日本の姉妹都市・友好都市提携は自治体国際化協会(CLAIR)の資料で1,800を超えており、類似規模・類似テーマの先行事例は必ず見つかります。産業を軸にした交流であれば、織物のまち同士で結ばれた桐生市とビエラ市(1963年提携)や十日町市とコモ市(1975年提携)のように、共通項を持つ都市間の長期交流が続いている例が参照点になります。また、千葉県八千代市とバンコクの間では2024年に、市長表敬・和太鼓共演・ホームステイ・企業セミナーを組み合わせた4泊5日の国際交流事業が実施されるなど、文化と産業を一体で設計する形も生まれています。
前例は「他がやっているからやる」ためではなく、事業規模と経費水準の妥当性を示す物差しとして使います。「類似団体では概ねこの規模で実施されている」と示せれば、積算の説得力が一段上がります。
4. 3つの根拠を1枚に束ねる
最後に、3つの根拠を「位置づけ(計画)→効果(数値)→妥当性(前例)」の順でA4一枚の説明資料にまとめます。査定の場で担当者が説明に使えるのはせいぜい数分です。詳細資料は別添にして、一枚で論理が完結する形を目指してください。
予算要求とは、熱意の表明ではなく、比較可能な材料の提出です。
事業設計の段階から効果測定を組み込む考え方は、姉妹都市・友好都市×地方創生でも紹介しています。要求資料の組み立てにお悩みの際はお問い合わせよりご相談ください。
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