国際交流の担当は、多くの自治体で一人か二人。翻訳も調査も報告書も、限られた人数と時間でこなさなければなりません。生成AI(文章や翻訳を自動で作るAI)は、この「少人数・多言語・多業務」という国際交流特有の状況と、実は非常に相性が良い道具です。
ただし、外交儀礼が絡む文書をそのままAI任せにするのは危険でもあります。本稿では、「使いどころ」と「注意どころ」をセットで整理します。
1. 書簡翻訳 — 下訳には最適、儀礼表現は人が仕上げる
姉妹都市との往復書簡は、生成AIが最も力を発揮する場面の一つです。従来なら翻訳業者に数日かけて依頼していた下訳(最終確認前の粗い翻訳)が、数分で手に入ります。
一方で、注意すべきは儀礼表現です。首長間の公式書簡には、宛名の敬称、結びの挨拶、相手の役職の正式呼称など、形式が重視される要素があります。生成AIはここで「意味は合っているが格が合わない」訳を出すことがあります。実務では次の使い分けが有効です。
- 本文の内容部分はAIで下訳し、意味の取り違えがないか日本語と突き合わせる
- 冒頭・結びの儀礼表現は、過去に受け取った相手からの書簡の表現を「型」として再利用する(相手が使った敬称・結語に合わせるのが最も安全です)
- 重要度の高い書簡(周年の公式親書など)は、最終段階でネイティブ話者または翻訳者の確認を入れる
AIに翻訳を頼む際、「これは市長から市長への公式書簡です。格式のある文体で」と文書の性質を伝えるだけでも、出力の質は大きく変わります。
2. 相手都市の「今」を知る — 現地報道モニタリング
意外に見落とされがちな活用法が、相手都市の現地ニュースの把握です。相手都市の名前で現地語のニュースを検索し、見出しと要点をAIに日本語で要約させる。これを月に一度行うだけで、「相手の市長が代わっていた」「大きな災害があった」「周年行事の報道が出ていた」といった変化に気づけます。
交流が動いていない時期でも、相手都市で災害や慶事があった際にすぐお見舞いやお祝いの書簡を送れる体制は、関係維持そのものです。休眠気味の提携ほど、この低コストなモニタリングが効きます。ただし、AIの要約は原文の誤読を含むことがあるため、書簡を送るなど行動に移す前には、元記事に立ち返って事実確認をしてください。
3. 議事録・報告書・議会答弁の下書き
国際交流事業は、実施後の文書作成が重い業務です。ここでもAIは下書き係として役立ちます。
- 議事録: オンライン会議の文字起こしをAIに整理させ、決定事項と宿題を箇条書きにまとめる
- 事業報告書: 行程表・参加者数・アンケート結果を渡して構成案と下書きを作らせ、担当者は事実確認と加筆に集中する
- 議会答弁や住民向け説明の想定問答: 「この事業に対して想定される批判的な質問を10個挙げて」と依頼すると、説明準備の抜け漏れチェックに使えます
共通する原則は、AIの出力は常に「初稿」であり、事実(数字・固有名詞・日付)は必ず原資料で確認することです。生成AIはもっともらしい誤りを混ぜることがあり、公文書ではこれが最大のリスクになります。
4. 庁内ルールとの付き合い方
忘れてはならないのが、所属自治体の生成AI利用ガイドラインです。多くの自治体で、個人情報や非公開情報をAIに入力することは制限されています。書簡翻訳であれば、個人名や連絡先を伏せ字にしてから入力する、庁内で承認されたツールのみを使う、といった運用が求められるのが一般的です。ガイドラインが未整備の場合は、情報政策部門に確認のうえ、まずは公開情報のみを扱う調査・要約業務から始めるのが安全です。
AIは国際交流担当の「もう一人の係員」— 下訳と下書きを任せ、人は儀礼と事実確認と関係づくりに時間を使う。この分担が最も成果につながります。
テクスト株式会社は全国21自治体で人材育成・プロジェクトマネジメント・国際交流を支援しており、AI活用の実務研修も行っています。姉妹都市・友好都市×地方創生の取り組みとあわせて、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
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