アカウントを配ったのに使う人が増えないとき、追加研修を決める前に、誰がどの仕事で使う想定だったかを確認します。全社員のログイン率だけでは、利用しない理由が分かりません。
毎日文章を作る人と、月に一度だけ対象業務が発生する人を、同じ利用回数で評価すると実態を見誤ります。利用を促す数字は、業務の頻度と一緒に見る必要があります。
対象業務・対象者・期間を決めて利用率を計算する
架空の会社で社員30人のうち、対象業務を担当する人が10人、今月その業務が発生した人が8人、実際にAIで試した人が5人だったとします。
全社員に対する利用者の割合は5/30=約16.7%、その月に対象業務が発生した人の利用率は5/8=62.5%です。何を分母にしたかで意味が変わるため、両方に対象と期間を添えます。
まず、対象の業務を一つに絞ります。件数の集計がすでにあればその記録を使い、なければ担当者へ対象期間を指定して聞きます。
| 記録する項目 | 集める内容・読み方 |
|---|---|
| 対象業務と期間 | 一つの業務に絞り、集計する月などの期間を明記する |
| 全社員・発行者・対象担当者 | 全社員30人、対象担当者10人という架空例。アカウント発行者数は別に記録する |
| 回答数と未回答 | 対象担当者10人全員が回答した前提。未回答は業務なし・利用なしに置き換えない |
| 業務の発生と利用 | 業務あり8人、その業務にAIを使った人5人。5/8の人数比率と、AI利用件数/全業務件数を分ける |
| 元の記録 | 受付・案件記録、日報・週報、期間を指定した聞き取り。概数か実数かも残す |
| 成果と比較条件 | 出力を採用できた件数・修正時間を別に記録。同じ期間長と問い方で比較する |
聞き取りは「対象期間にこの業務があったか」「何件あったか」「AIを使った件数」「使わなかった理由」を一組にします。未回答者を業務なし・利用なしへ振り替えず、回答数も残します。
先ほどの例なら、対象者10人の全員から回答を得たうえで、業務あり8人、AI利用あり5人と集計します。人数の利用率5/8と、全業務件数に対するAI利用件数の割合は別の指標です。改善の前後では、同じ問い方と期間で集めます。
使わなかった理由を、選択肢と具体例で聞く
| 理由 | 次に確かめること |
|---|---|
| 使う仕事がなかった | 対象業務の発生頻度と配布範囲 |
| 入力してよい情報が分からない | 実例を使った利用ルールの説明 |
| 何を指示すればよいか分からない | 入力例と出力例の有無 |
| 出力を直す手間が多い | 誤り、形式、資料不足のどれか |
| 普段の作業から移るのが面倒 | コピーや保存の手順、利用導線 |
「興味がない」という回答でも、実際には操作を試す時間がない場合があります。理由を一つ決めつけず、直近で使おうとした場面を聞くと改善点が具体的になります。
利用回数と、使える結果を分ける
ログインや生成の回数が増えても、仕事で採用できたとは限りません。試した件数、出力を使った件数、修正にかかった時間を分けます。
架空の観察では、同じ一件を何度も生成し直したため、利用回数だけが多くなることもあります。その場合は利用促進より、入力資料や指示の修正が先です。利用者に回数だけを目標として求めると、確認の負担を見落としやすくなります。
改善は一つの場面で試す
たとえば「会議後のメモ整理で、入力例が見つからない」という声があれば、その業務の共有場所に素材例と指示を置きます。次の会議で使えたか、どの箇所を直したかを確認します。
改善前後を比べる期間も、業務が発生する頻度に合わせます。月次業務を一週間で評価したり、休暇の多い期間と通常期を単純比較したりしないようにします。
広げる前に、支援の負担を確かめる
利用者が増えるほど質問も増える場合があります。操作の質問は手順へ、資料の誤りは管理者へ、業務判断は責任者へ戻すなど、相談先を整理します。
利用率は改善の入口です。最終的には、担当者が仕事で使えることと、確認する側も続けられることを確かめます。AI定着の振り返りと引継ぎに記録の基本をまとめています。
研修後の「使えなかった場面」を聞く記入票
研修を受けたかどうかに加え、実際の仕事で止まった場所を聞きます。次の書式は、利用者の意欲を採点するためではなく、業務の条件を直すためのものです。
対象期間:
対象業務:例・商談メモから提案骨子を作る
期間内にこの業務はあったか:あり/なし/未回答
業務の件数: 件(記録値/概数)
AIで試した件数: 件
仕事で採用した件数: 件
直近で止まった工程:資料探し/入力/出力確認/修正/保存
その場面で起きたこと:
次回そろえるもの:入力例/利用可否の判断/確認者/保存手順
改善の担当と、次に業務が発生する時期:
改善後に確かめること:
架空の聞き取りで「提案骨子を作ろうとしたが、どの料金表を入力してよいか分からず止まった」と分かったなら、先に最新版の置き場と入力可否の確認先を決めます。プロンプト講座を追加するだけでは、この停止理由は解消しません。
利用率が上がれば、導入は成功ですか?
利用者が増えても、確認担当の負担や再生成が増えた可能性があります。利用した人数、業務に採用した件数、確認・修正時間を別々に見てください。未回答の人を未利用へ置き換えず、対象期間に業務が発生したかを添えて比較します。
入力条件が整ったら実業務に近い研修課題で再試行し、継続の担当・質問先は定着と引継ぎの手順へ残します。
利用が伸びない業務が分かったら、件数と使わなかった理由をもとにAI活用の見直しを相談できます。利用者数だけでなく、仕事で採用できる結果を増やすための条件を整理します。