AIエージェントは、与えられた目的に向けて情報を集め、次の処理を選び、ツールを使って仕事を進める仕組みです。文章を返すだけでなく、検索やファイル操作などを組み合わせられる点が、業務で検討する際の特徴です。AWSのAIエージェント解説
ただし、エージェントと呼ばれる製品なら、社内の仕事を何でも任せられるわけではありません。何を読めるか、何を変更できるか、どこで人に戻すかは、製品の機能と自社の設定で変わります。
生成AI、ワークフロー、AIエージェントの関係
生成AIは文章などを生成する技術で、AIエージェントの中でも使われます。両者は排他的な分類ではありません。導入時は、仕事の進み方を比べると整理できます。
| 仕事の進め方 | 例 | 主に決めておくこと |
|---|---|---|
| 一回の生成・要約 | 渡した会議メモを整理する | 入力と完成形式 |
| 決まった順番の処理 | フォーム内容を分類し、担当別の下書きを作る | 分岐条件と失敗時の扱い |
| 状況に応じて次の処理を選ぶ | 調査の不足に応じて参照資料を探し直す | 使えるツール、判断範囲、終了条件 |
Anthropicも、決められた経路で処理するワークフローと、モデルが処理を動的に進めるエージェントを区別しています。単純な構成で目的を満たせる場合は、複雑にしすぎないという考え方です。Anthropicの設計解説
RPAなどの自動化と、何が違うか
RPAは、決めたルールに沿って画面操作やデータの転記などを実行する技術です。例えば、決まった欄の値を別のシステムへ写す処理なら、手順を固定できます。AIを組み合わせる構成もあり、RPAとAIエージェントが完全に別物というわけではありません。IBMのRPA解説
違いを見るときは、次に進む処理を誰が決めるかを確認します。規則で分岐する構成では、設計した条件に沿って処理します。エージェントでは、モデルが調査結果などを受けて、次に使うツールや参照先を選ぶ場合があります。想定外の入力に必ず対応できるわけではなく、誤った操作を選ぶこともあります。どちらも例外時の扱いが必要です。
営業準備で使うと、どこまで進められるか
架空の例として、営業担当者が初回面談の準備をする場面を考えます。
- 会社の公式サイトから事業と公開ニュースを集める。
- どの情報を、いつ、どのページで確認したか残す。
- 自社サービスと関係しそうな業務を仮説として挙げる。
- 不明な点を面談で聞く質問にする。
- 担当者が資料と質問案を確認する。
ここでの完成物は面談の準備資料です。「公開サイトに記載がないから、その会社は困っている」と断定したり、見つけた宛先へそのまま営業メールを送ったりする必要はありません。
業務を設計するときは、最終的に受け取りたい成果物を先に決めます。「営業を任せる」という依頼のままでは、調査・判断・社外連絡の範囲が曖昧になります。
任せる操作を、一つずつ決める
| 操作 | 試行時に決める条件 |
|---|---|
| 情報を読む | 対象フォルダ、参照できる人、対象外の情報 |
| 下書きを作る | 保存先、上書きの可否、元資料との対応 |
| データを更新する | 更新項目、重複時の扱い、変更履歴 |
| 社外へ送る | 送信先、最終本文、添付、承認する担当者 |
| 削除する | 対象、復元方法、実行前に必要な確認 |
読み取り専用の仕事には、書き込みや送信の機能を付けない設計が考えられます。OWASPは、AIに与える機能・権限・自律性が大きすぎる問題と、必要最小限に絞る対策を整理しています。OWASP Excessive Agency
「慎重に実行して」と文章で指示するだけでは、アクセス権の代わりになりません。接続先でも権限を制限し、承認済みの対象と実際の操作が一致するかを確認できるようにします。
外部のページやファイルを読む場合は、その中の指示が作業を変えるプロンプトインジェクションも検討対象です。資料を読んだことが、送信や権限変更の許可にならないよう、資料の扱いと実行機能を分けます。
外部から取り込む指示の扱いは、プロンプトインジェクション対策で確認できます。
最初の試行は、正常な入力だけで評価しない
仕事で止まりやすい条件も用意します。必要な資料が見つからない、同名のファイルが二つある、途中で接続が切れる、依頼が重複する、といった場面です。
試行記録には、入力、参照資料、選んだ処理、出力、人が修正した点を残します。途中で失敗した場合は、再実行する前に、どの操作まで終わったかを確認します。保存や送信を二重に行うと、文章の品質とは別の事故になります。
終了条件も必要です。資料を何件まで調べるか、どこまで進んだら人へ戻すか、時間や費用の上限をどう扱うかを決めます。いつまでも追加調査を続ける仕組みは、業務の完了を判断しにくくなります。
効果は、確認と復旧の時間も含めて測る
生成が速くなっても、確認や修正が増えれば担当者の負担は下がらない場合があります。実際に完成した仕事の件数、担当者が使った時間、誤りややり直しを記録してください。測り方はAI導入の効果測定で紹介しています。
順番が決まった処理から試す場合は、AIで業務を自動化する設計手順を使えます。
AIエージェントを検討するときは、まず「何を読み、どんな完成物を作り、誰が確認するか」を一つの仕事で書いてみます。最初に試す業務の選び方から整理し、接続や実行範囲まで必要な場合は導入方法を相談できます。